はじめに


電子技術の進歩により大量デジタルデータの生産・処理・記憶が可能になり,1990年代後半のインターネットの普及は,その流通に革命的変化を起こした.今日,膨大なデータが世界各地のwebで公開されてインターネット上を飛び交い,その量は更に加速度的に増加している.利用方法も多様化し,社会,経済,政治にも大きな影響を持つようになってきた.データ量の飛躍的増加と流通形態の変化は,学問のあり方を大きく変え,情報の迅速な処理が学問の生産性を大きく左右するようになってきた.
このような変化に対応して世界的にデータネットワーク体制の整備が進んできたが,日本の現状は十分でない.これに対する危機感に基づき,第17期日本学術会議第4部(理学)では,1998年12月に開催された理学総合連絡会議に地球電磁気学研究連絡会から「理学データネットワーク構想」が提案された.この提案を受けて,1999年2月に理学データネットワーク検討会が開催され,この議論にもとづき第4部会長の和田昭允氏が「理学データネットワーク推進小委員会」の設置を決定した.
設置された小委員会では,理学共通の課題として,公開を必要とするデータの種類と量,迅速なデータ処理とデータ公開の方法・体制,データネットワークに関する国際対応について総合的な検討が行われるともに,アンケート調査も実施された.17期終了時点(2000年7月)で,この小委員会の報告書原案が東北大学のwebに載せられたが,諸種の事情により最終報告書の作成作業は進まなかった.しかし小委員会で取りまとめた理学データベースに関する広範囲な資料を有効に活用すべきとの要望が高まり,昨年,有志委員により「理学データネットワーク推進ワーキンググループ」(代表は荒木徹氏)がつくられ,報告書作成作業が進められた.
完成した報告書「理学データベースの構築促進とデータネットワーク体制の整備について」は、本来ならば日本学術会議の「対外報告書」として公表すべきものであるが,そのためには現行の学術会議規則では,新たに第19期第4部会長のもとに小委員会を立ち上げるという複雑な手続きが必要となり、早急に活用したいという要望に答えることができなくなる。そこで今回は,ワーキンググループの報告書として出版した.既に古くなった内容も含んでいるが,日本のデータネットワーク体制はなお解決するべき多くの問題を抱えているので,それらが議論される際に,この報告書を活用して頂ければ幸いである.


2004年6月

第17期日本学術会議 第4部会
理学データネットワーク推進小委員会
委員長 福西 浩 (東北大学理学研究科)