「理学データベースの構築促進と体制の整備に向けて」

資料3_1

(1) 測地学審議会建議「地球科学における重点課題とその推進について」(平成7年6月)
    (抜粋:データベース,モデリング,計算機シミュレーション,環境変動予測関係部分)


第1章 地球科学の最近の研究動向と研究課題

1 最近の研究の特徴

(3) データの処理と流通の促進
 近年の計算機能力の向上と情報ネットワークの発展により,地球科学の様々な分野において大量のデータの取得,処理(解析),保管及び世界からのアクセスが可能になってきた.その結果,例えばグローバルな地震データが世界の様々な地域での地震発生機構の解明に利用される等,データは共有財産となりつつある.
 一方,先に述べた人工衛星によって得られる多種・多量なデータが,地球科学のすべての分野で利用されるに至った背景には,地球全体にわたる多量のデータを,複雑なアルゴリズムの適用を経て物理量に変換して提供する,リモートセンシング技術の発展があることを見逃すことはできない.
 しかしながら,我が国においては,観測等によるデータの取得は進んでいるものの,それらのデータを世界の研究者に利用可能な形で提供する公開・流通・発信においては未だ不十分であるとの指摘がなされており,そのシステムの開発は,国際的な動向に留意しつつ,今後とも積極的に検討していく必要がある.

(4) モデリングおよびシミュレーション技術の高度化
計算機科学の進展に伴い,モデリング及びシミュレーション技術が高度化してきた.これらの技術は,より広い分野の科学の総合化を可能とし,地球科学の新しい研究の局面を開くとともに,地球を取り巻く諸現象についてより長期的でより確実な将来予測の基礎を提供することが期待されている.
 モデリング及びシミュレーションの技術は,様々な観測や実験のデータを有機的に結び付け,事象の総合的な理解を深めるために不可欠であり,研究の進展とともに全地球規模で扱われるようになってきた.例えば,超高層大気における放射・力学・化学過程結合モデルや気候変動解明のための大気・海洋結合大循環モデルが格段の進歩を示しつつある.
 マントル対流の解明や惑星形成理論の確立等,十分な観測データが得られない分野においては,モデリング及びシミュレーションの果たす役割は更に大きい.
 観測やデータ解析とモデリングやシミュレーションとを互いにフィードバックさせることにより,地球科学の一層の発展が期待される.


第3章 地球科学における研究体制の整備

(3) 大量のデータ処理と情報ネットワークの整備
人工衛星による観測や海外を含む観測網の広範は展開,観測技術や伝送技術の飛躍的な向上に伴い,地球科学の諸分野で大量のデータが生み出されており,それらの迅速な処理と効果的な利用は地球科学の推進にとって重要な課題となっている.一方.近年,パーソナルコンピューターの普及と情報処理技術の発展によって,国際的な計算機ネットワーク(インターネット)が急速に拡大し,世界の情報やデータが,研究機関や研究者から他の研究者へと直接に,要求に応じて提供されるようになってきた.今後は,すべての研究・観測機関において,このような分散的な情報システムに対応したデータベースの構築,公開,流通などの体制の整備が求められるようになっており,国際的な場においても検討がすすめられている.
 現在関連分野の機関は学術情報センターが運用する学術情報ネットワーク(SINET)や東京大学の国際理学ネットワーク(TISN)等を通じてインターネットに接続され,国内外の研究機関や研究者へのデータの提供が図られているが,データを海外を含めて多くの研究者に利用可能な形で提供するためには,提供機関において相当の技術や労力を要すること等から,海外からの情報の取得・利用に比べて,我が国からの情報の提供・発信は進んでいないとの指摘が海外からも寄せられている.
 このような状況を改善するため,人工衛星による地球観測や大規模な観測計画の実施に当たっては,必ず観測データを世界に公開・提供するシステムを計画の中に位置づけることが求められる.また,研究を支える基盤としての観測データの意義にかんがみ,データの提供を研究の重要な一環であると位置付け,研究上の貢献として正当に評価するシステムを構築する必要がある.